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【映画】 夜明け


【★★★(個人的好みを5段階で)】


観終わった直後は面白かったのか面白くなかったのかもよくわからなくて、ただもやもやとした感情だけがあったのですが、時間が経って少しわかってきました。
いたたれなさと居心地の悪さでできている作品で、物語の解釈とラストの解釈と鑑賞後にどういう感情が湧いたかは観客それぞれに委ねます、というタイプの映画だと思いました。
私の場合、後味の悪さとやりきれなさが残りました。
登場人物は誰も救われていないし、むしろ、物語が始まる前よりも悪くなっているし、ラストのその後は、私の解釈ではさらに良くない展開になると思うので、どうしてもやりきれなさが残ります。
では面白くなかったかといえばそんなこともなくて、この救いようのなさが文学的のようであり、高尚な映画を観たような気分に浸ることができます。

秘密にしたい過去を抱えた青年・シンイチ(柳楽優弥)と息子に対して後悔の念を抱いている初老の男・哲郎(小林薫)。
偶然出会った二人は、お互いの存在が支えとなって次第に絆のようなものが芽生え始めるのですが……。

シンイチはあらゆる場面で間が悪い、空気が読めない、気を遣いすぎて(遠慮がすぎて)その場の雰囲気をしらけさせる、そういうタイプの青年で、見ていてイライラするしハラハラするしいたたまれなくなります。
親からもバイト先の店長からもぞんざいに扱われてきたと言う彼ですが、たぶん私がバイト先の店長でも、こういうタイプの子は好きじゃないだろうなと思います。
悪い子ではないんだけどぼんやりしててはっきりしないところが気持ちよくない。

そんなシンイチにとって哲郎の存在は救いだっただろうし、哲郎にとってもそうだったろうと思います。
だけどやっぱり間が悪くて、きっと出会うタイミングが今じゃなかった。
そして、いろいろあってからのラスト、シンイチが行動を起こしたタイミングも間違っていたし、ラストのラストのシンイチの選択もきっと間違っている。
すべてのタイミングと選択が、全員が嫌な気持ちになる、わだかまりが残る、そういう方に進んでしまう間の悪さが終始気持ち悪くて、すごいと思いました。
残酷すぎて気持ち悪いとか不幸すぎて気持ち悪いとか、そういう突き抜けた気持ち悪さではなくて、ちょっとずつずれている不協和音のような気持ち悪さ。
どこかをどうにかすれば、かちっとはまってすべてが上手くいきそうなのに、なかなかそうはいかないもどかしさ。

夜明け、というタイトル。
私は、物語のその後に明るい夜明けは感じられなかったのですが、シンイチと哲郎がほんのちょっと変われればもしかしたら事態は好転し始めるのかな、そうだといいなと、そう思いました。


【◆作品データ → 映画.COM


【映画】 夜明け_a0220528_23304211.jpg
【映画】 夜明け_a0220528_23303216.png

by wakabanokimochi | 2019-02-08 23:33 | 映画 | Trackback | Comments(0)