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【読書】 巨鯨の海 / 伊東潤

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★★★<5段階評価>

古式捕鯨発祥の地といわれる太地。
危険な鯨漁師として生きる人々の生活を切り取って描いた短編集。

イルカの追い込み漁が物議を醸していたので、前から気になっていたこの作品を読んでみた。

何の産業もない太地の漁村が鯨漁で発展し、そこに住む人たちはみんなが何かしら鯨漁に携わっている。
自分たちの生活の糧となる鯨を畏敬の思いを込めて「夷(えびす)様」と呼ぶ。
生き物の命を奪う様子は残酷にも思えるけど、息絶えていく鯨に向けて念仏を唱え、毎年供養の法要を行うなど、「命をいただく」ことはけっして残虐な殺戮ではないことが描かれている。

たしかに、文明が進んで食べ物が豊富なこの飽食の時代に鯨やイルカを捕って食べることは野蛮だ、という人たちの気持ちもわかる。
ただ、この作品を読んで、鯨漁師であることに誇りを持ち、先祖代々掟と技を受け継いできた人々の思いを垣間見た今、鯨漁の歴史まで否定してしまうのは違うんじゃないかと思った。


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by wakabanokimochi | 2015-06-24 13:23 | 読書 | Trackback | Comments(0)