2015年 08月 04日
【読書】 永い言い訳 / 西川美和
★★★★★<5段階評価>
衣笠幸夫は、自分の名前が野球選手のカープの鉄人・衣笠祥雄と同じ読みであることを忌み嫌い、そんな名前をつけた父親のことも恨みに近い感情で嫌っていた。
そんな彼が小説家を目指すのは、ペンネームという新たな名前を手に入れ、忌み嫌っている本名を封印するためでもあった。
主人公・幸夫の歪みっぷりというか、欠落ぶりがすごい。
その卑屈さにイライラすることもあるんだけど、不思議と嫌いにはなれない。
彼の人生や考え方を変えるある決定的な出来事はかなり重めで悲惨だけど、それからの方が明るめで希望的で、時々ユーモラスで、だけど、それもなんだか危うくて、そういう不安定さにハラハラしながらも最後まで惹き込まれた。
夫婦とかの親しい人間関係が、「嫌いになった」とかの決定的な理由ではなくて親しいがゆえにこじれていく様子が生々しくて、主人公が歪んでいるからリアルに描かれている。
こういうきれい事じゃない作品はグッとくる。
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