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【読書】 11/22/63 / スティーブン・キング

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★★★★<5段階評価>


2011年のある日、高校教師のジェイクは友人のアルから“過去へ通じるタイムトンネル”の存在と秘密の計画を打ち明けられる。
アルが営むレストランの倉庫には、1958年9月19日11時58分のその場所に通じるタイムトンネルがあると言うのだ。
過去の世界で何時間、何年過ごそうと、トンネルを通って現在の世界に戻って来た時には出発してから2分しか経過しないと言う。
末期ガンに侵されてしまったアルは、自分に代わって1963年11月22日にダラスで起きたケネディ暗殺を阻止してほしいとジェイクに頼む。

1冊500ページを超えるうえに2段で書かれていて、しかも上下2巻という超長編。

洋書を翻訳したのものは、言い回しが不自然だったり、その国の文化や歴史をある程度知っていないと想像や共感がしにくいので苦手なのです。
ジョークとか喩え話とかがよくわからないし、登場人物たちの心の機微を感じ取りにくい。
例えば、日本の歴史物で女性から男性に告白するというシーンがあった場合、日本の文化や歴史を知っていれば、その女性がどれほど強く勇気を出したかとかどれほど相手を想っていたかということを、説明されなくても汲み取れる。
海外文学では、私がそういう細かいニュアンスを感じ取ることができないので物語に入り込めないのです。

この作品も、そういう意味ではよくわからない部分とかはあったんだけど、それを差し引いてもすごく面白かった!

まず、特定の時間と場所にしか行けないというのが枷になって物事が複雑になっている。
行きたい時間に行ければもっと簡単にできることが、そうはならないもどかしさとハラハラ感。
それから、1958年から1963年までの5年間を過去の世界で過ごすことで、タイムスリップしてきたジェイクにもしっかりとした人間関係や生活スタイルが出来上がっていく、その危うさや儚さ。
ケネディが暗殺されなければもっとよりよい国になっていたのではないかという一種の正義感から始めた行動だったのに、過去の世界で生活するうちに矛盾や葛藤に苛まれていくさま。
ケネディ暗殺を阻止しようとするただの痛快な冒険活劇ではなく、とてつもなく重い責任を負わされてしまった男の人間ドラマ。


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by wakabanokimochi | 2015-03-03 15:44 | 読書 | Trackback | Comments(0)